暑さ吹き飛ぶ爽快感!炭酸水そうめん×1年熟成ゆずこしょう
九州の秘境と言われる阿蘇くじゅう国立公園、特別地域にある黒岳。その麓には白水鉱泉や男池(男池湧水群)など良質な湧水地があります。原生林が豊かなこの地から湧き出る水は1日に数万トン。
国内でも珍しい天然炭酸水を汲める場所として有名ですが、これらの湧水地を更に奥へと進むと、知る人ぞ知る湧水の炭酸水で“そうめん”を食べられる場所があるのです。
体験したことのない爽快感 ブクブク湧水で食べる新しい形
大分でも有名な天然炭酸水を汲める白水鉱泉。そこを超え木々の中に佇む看板を通り過り過ぎると、炭酸そうめんを食べられる「黒嶽荘」へと辿り着きます。
途中、水しぶきを上げる小さな滝があったり、小川が流れていたりとマイナスイオンたっぷり。自然のクーラーで、避暑地としてもお薦めです。
昭和35年に黒岳の登山口付近を開拓し、はじまった黒嶽荘。その歴史は60年以上、現在は3代目の江藤光男さんが受け継いでいます。
2代目からはじまったという炭酸水そうめん。当初は普通のボウルで出していたそうですが、炭酸が抜けてしまうことや湧水のままの冷たさを維持するのが難しいことなど、多くの課題があったそうです。
ひとつひとつの課題に向き合い「ずっと美味しく食べられる方法はないか」と試行錯誤し、炭酸そうめんが美味しく食べられる今の形に行きついたのだといいます。
日本でもなかなか見られない、その形……黒嶽荘のそうめん専用の座席には、透明のボウルがずらりと並び、覗き込むとひとつひとつのボウルに炭酸水が湧き上がっています。
新鮮な炭酸水でボウルが満ち、茹で立てそうめんが入ったザルを浸すと湧水の冷たさで麺が引き締まります。
そうめんの概念が変わる シュワシュワとピリピリの相乗効果
そうめん用のつゆには胡麻とネギ、黒嶽荘で代々作っているゆずごしょう付き。
そうめんを浸してツルリと食べると、炭酸水のシュワシュワにゆずごしょうのピリピリが溶け込んで、今までに食べたことのないような爽快感を味わえます。
じんわりとかいていた汗も一気に引っ込むような感覚……喉越しの良さと、食べた後の心地良さは“ここだけしか食べられない素麺”という言葉にも納得の逸品です。
使用しているそうめんは島原素麺。炭酸水に合うものを探し、こちらがぴったりだったそうです。
当初は山葵を使っていた薬味も、25年ほど前からゆずごしょうに変更。そうめんのために生まれたゆずごしょうは、1年間熟成させることで唐辛子の角が取れ、まろやかな風味に仕上がっています。
「このゆずごしょうができたのも偶然と言いますか……1年前に作った樽を見つけて、食べてみると非常に美味しかった。時間を置くことで食べやすく、風味豊かなゆずごしょうになっていました。これをもっと美味しくしようと考えたのが始まりです」と江藤さん。
そのゆずごしょうをそうめんに付けるようになると、「売ってくれないか」という声が多くなり、商品化に至ったのだといいます。
辛いけれどフルーティーさもある 木なり完熟柚子を使用した人気商品
柚子も唐辛子も大分県産のものを使い、唐辛子は無農薬で作っていると語る江藤さん。
「1年熟成ゆずごしょう」は青い柚子を使用。赤い「完熟ゆずごしょう」は、木に付けたまま黄色くなるまで完熟させた柚子を使用しています。
“木なり完熟”で採った柚子はとてもフルーティー、甘い風味がプラスされ辛さと柚子の瑞々しさが合わさったゆずごしょうになるそうです。
ひとつひとつの材料と状態にこだわり、妥協せずに作る姿勢は、炭酸そうめんが生まれた時と同じ「美味しいものを届けたい」そんな思いと繋がっています。
炭酸水そうめんを食べられる時期は4月~11月の終わり頃まで。ゆずごしょうは秋に1年分を仕込むため、なくなり次第終了となります。
これら2種類以外にもパスタに合う「ゆずペリーラ」や、ゆずごしょうに糀とピーマンを合わせた味噌感覚でご飯にぴったりの「ゆず糀(はな)」も贈り物に人気の品です。
ミネラルたっぷり 老廃物を排出する効果もある湧き水
黒嶽荘の湧き水は、軟水の炭酸水で飲みやすいのも特徴。含まれる炭酸ガスは利尿効果を高め、老廃物を排出する効果もあります。豊富なミネラルは加熱しても失われず、コーヒーや料理に利用しても美味しいのだとか。
そんな天然炭酸水は持ち帰りも可能。その場で飲むのは無料ですが、持ち帰り料金は、2リットル100円、5リットル200円で受け付けています。
宿泊も可能で、夏休み期間多くのお客さまで賑わう黒嶽荘。炭酸水そうめんだけでなく、エノハ(ヤマメ、アマゴの九州地方の別名)や鶏の炭火焼き、つやつやのお米が嬉しいおにぎりも味わうことができます。
食事ブースの前には小さな湧水池があり、暑い時期は子ども達が遊ぶ姿も見られます。
「そんなに広くないですが、子どもと水遊びも可能です。ただ湧水なので冷たさに驚くと思いますよ」そう笑う江藤さん。
珍しい炭酸水そうめんと美味しい山の幸、湧水に触れて、とびきりの爽やかさを体感できる“隠れ家”が黒嶽荘です。
遠方の方も楽しめるようにと、ゆずごしょうや炭酸水そうめんセットも用意されていますが、目が覚めるような炭酸水の冷たさを味わえるのは現地ならでは。
「まずは黒嶽荘を知ってほしい、そして機会があれば是非訪れてほしい」と語る江藤さん。
大分県由布市庄内町阿蘇野の山深くにある黒嶽荘。驚きと発見は一生の思い出に……一度訪れると人の温かさと、透明感溢れる湧き水に魅了されるに違いありません。